糖尿病

温暖化により地球が熱くなっています。
砂漠が特に暑いのは砂が太陽熱を蓄積するからですが夜は反対に放熱するので毛布がいるほど気温が下がります。
この過酷な環境ではエサも少ないため生き物は食べられる時に大量に食べておく必要があります。
食べた後には哺乳類を始めとして鳥類・爬虫類・両生類・魚類など多くの生物の血糖値が上昇しますが、砂漠のトカゲは食べても空腹でも血糖値はほぼ変わりません。
このアメリカドクトカゲは口の中に餌がきた瞬間に血糖値上昇を知らせるホルモン(GLP-1)を分泌し、それが血糖値を下げるホルモン(インスリン)を分泌させるのです。
このトカゲから糖尿病の薬(GLP-1薬)が開発されました。
今GLP-1薬をダイエット目的で処方するクリニックが大流行しています。
というのもGLP-1は食べ物が胃から腸に運ばれるのを遅くすることで満腹感を増し食欲を抑制するため実際に体重を減らすからです。
その結果GLP-1薬が世界中で品薄になり出荷規制まで起き本来この薬を必要とするの糖尿病患者に回らない状況になっています。
欧米では元々かなりの肥満体型(BMI30以上:例えば160cmで77kgくらい)にだけ処方される薬です。
副作用(便秘・吐き気・低血糖・膵炎)もあり日本医師会や厚生労働省が警鐘を鳴らしています。
ちなみに同じタイプの薬を肥満症治療薬(ウゴービ)として厚生労働省が製造販売承認し2024/2/22発売されます。

さて11/14は世界糖尿病デーですが、この日は1921年に「インスリン」を発見したカナダのフレデリック・バンティング博士の誕生日です。
インスリンは血糖を少なくできる唯一のホルモンであり20世紀最大の発見のひとつと言われました。
糖尿病はインスリンを作る細胞が破壊されたタイプ(1型)と、インスリンが不十分か、または効果が低下したタイプ(2型)があります。
インスリンが出ない1型糖尿病ではインスリンが命をつなぐ必須の薬と歓迎されます。
逆にインスリンは分泌されている2型糖尿病に対してもインスリンが投与されます。
これは長期間にわたる高血糖状態で血管が傷つけられ動脈硬化が進行し心疾患や脳卒中、腎臓病、網膜症、神経障害が起きるためです。
しかし1990年くらいからインスリン投与でこれらの疾患を本当に防ぐのか疑わしい研究結果が出てきています。
そして発見から約100年経ちましたが糖尿病人口は増え続ています。
実は人間もトカゲのように飢餓にさらされてきた生き物でそれに耐えられるような能力(遺伝子)は備えています。
しかしコーラ、砂糖、シロップ、果糖や果糖ブドウ糖液、スイーツ、揚げ物、麺類、白米、パンなどまさかの飽食の時代の誘惑から自分を守る能力は持ち合わせていません。
糖尿病もダイエットも製薬会社にとっては巨大なマーケットになりました。

インスリンはブドウ糖が細胞の中に入る扉を開くことで血糖値を下げます。
扉を開いて細胞の中にブドウ糖が入ると中性脂肪として脂肪細胞・肝臓などの臓器・骨格筋にどんどん蓄えられ「肥満」になります。
つまりインスリンはブドウ糖を消費しているわけではなく脂肪に変換しているだけです。
またインスリンによる低血糖は空腹感につながり過剰なカロリー摂取からやはり肥満につながります。
肥満になると脂肪を蓄える場所(肥満細胞)も空きがなくなりブドウ糖が入るのを拒むようになるのでインスリンが効きにくくなります。(インスリン抵抗性)
そうなると今度は血中のインスリン濃度が高くなります。(高インスリン血症)
この肥満→インスリン抵抗性→高インスリン血症のサイクルに入るとHbA1cや血糖値の数値もなかなか下がらずインスリン投与量をさらに増やす悪循環に陥ります。
実際1型の人もインスリンを投与し続けて2型になることがあります。

糖尿病治療はインスリン療法の前に食事療法と薬物療法があります。
薬物は内服薬と注射薬(インスリンとGLP-1受容体作動薬)があります。
内服薬は色々な種類が開発されてきましたがインスリンを利用するものとしないものに分けられます。
インスリン生成を促す、インスリン感受性を高める、インスリンを分泌させる、インクレチンを分泌させる(GLP-1)、インクレチンが分解されないようにするなどの薬はインスリンによる効果を期待したものです。
ブドウ糖の合成を阻害する、ブドウ糖の分解吸収を阻害する、ブドウ糖を尿から排泄させる薬はインスリンを利用しませんがおおむね作用は弱いと言えます。
(※GLP-1薬はインスリンを分泌させますがすぐ分解されるので低血糖も少なく、現時点で肥満につながる報告もありません。)
上記の薬の効果が不十分、または病状が進行した場合にはインスリン療法に移行することになります。
最近は自分で血糖値を測定器を持ち、患者さん自身でインスリンを注射します。
最近、測定器を忘れ外出先で自分の経験から投与量を判断してインスリン注射をして低血糖から意識消失し自動車事故を起こした事件もありました。

糖尿病の自覚症状には人により「尿の回数が多い、口渇、疲れ、乾燥肌、手足のしびれ、やせる、熱感、手足のほてり、口渇、寝汗」があります。
東洋医学ではこうした状態を「陰虚」と呼び体内の水分が不足している状態を指します。
水分とは汗や唾液、胃液などの他にリンパ液やホルモンも含みます。
インスリンが不足したり効きが悪くなっているのも陰虚と言えます。進行すれば陰だけでなく陽虚(機能低下)もともなってきます。



以下具体的な状態と対応法です。

・陰虚
激しい口渇で大量の水を飲む、食べてもすぐお腹が空く、頻尿、のぼせ、寝汗などはそれぞれの症状に合わせた漢方とともに体を潤すものを併用します。

・不眠と過食
糖尿病の4割に睡眠障害がありますが、それがインスリンの分泌と効き目の低下を招きますので対応するものが必要です。

・合併症と活性酸素
長期にわたる糖尿病は網膜症や腎症など微小血管の障害が出ます。
特に食後血糖値が高い傾向の方は微小血管だけでなく大血管障害(心筋梗塞など)の発症率があがります。

それぞれに対応するものをお勧めします。

活性型ビタミンDは膵臓β細胞でのインスリンの生産と分泌を助けます。
学術雑誌「サイエンス」には活性型ビタミンDを与えた状態とビタミンD欠乏状態を比較して、活性型ビタミンDを与えた場合はインスリン分泌量が二倍もあることが報告されています。
また糖尿病ではビタミンDとカルシウムの不足により健康な人の三倍の骨減少が見られます。
活性型ビタミンDを増加させることも大切です。

このような選択で血糖値やHbA1cが下がりインスリンが不要になることがあります。
インスリンを使用し始めたらもう戻れないかというとそうではありません。
食事療法や自己管理でインスリンが不要になり健康に暮らしている方もおみえになります。